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date2015年3月9日

Vol.2 就活アウトロー採用参加者のその後|位川悠一さん

第2回目のインタビューは、IT企業ではたらきながら、小説家を目指す位川悠一さん。就職して間もない位川さんは、入社に至るまでの考えを、彼らしい語り口で話してくれました。


「君は就職しない方が良い」と言われたことが、一番大きな出来事だった。

アウトロー採用に参加したきっかけ

絵具のため。結婚のため。参加の動機は主にこのふたつです。絵具の方から先に説明すると、僕は十代の頃から小説を書いているんですが、小説を書くには、筆と絵具のふたつが必要だという考え方をしていて、筆っていうのは純粋に自分の技術力のことなんですけど、絵具っていうのは、例えば話の題材とかネタとか、そういうものを指して言っています。だから筆の方は、自分ひとりの努力や経験で鍛えられるんです。だけど絵具に関してはそうもいかなくて、自分の中にあるものだけで物語を書いたら、どうやったって独り芝居になってしまうので、良い作品は出来ないわけです。なので小説に使う絵具を絶やさないためには、常に新しい出会いをする必要があるので、小説を書く工程全体の半分ぐらいは、他者と向き合い続けることなんだと、僕は思っています。そんなわけで、26歳になるまで、会社員として働いたことが一度もなかった僕は、Facebookでアウトロー採用のサイトを偶然目にしたとき、これは面白そう。今まで自分がしてこなかった経験が出来そうだと考えて登録フォームに個人情報を入力したんです。次に結婚のためっていう動機の方なんですけど、こっちは特にひねりもなく文字通りの意味です。大学を中退してから、最低限のお金でやりくりして、会いたいひとに会って、小説を書いて、というだけの日々を送りながら、プロの小説家になることを目論んで生きてきたんですけど、そんな日々を送るうちに出来た恋人が、六畳しかない僕の家にいつの間にか住み始めていたんです。これは人生の流れ的に、もっと広い家に引っ越して、結婚とか考える時期なんだろうな。だけどそれには固定収入が要るよなーなんて考えるようになっていたことも、僕がアウトロー採用への参加を決める上での大きな要因でしたね。

参加してみて

僕から見て、当初100人以上居た参加者の中に、普通の人がひとりだけ混じっていたんですけど、それが僕でした。っていうのも僕の中の”普通観”みたいなものがあって、言ってしまえば「この世で自分だけが普通であり、あとは全員おかしくて、だからおかしいことは悪いことではない」みたいな考え方なんです。ずいぶん周りくどい言い方をしてしまいましたが、僕にとっての普通って言葉は、自分自身がいちばん自然な状態のことを指していて、だから例えばたくさんの人間が一同に介して、みんながみんな自分にとっての普通な状態で居たなら、きっとそれは個性的な集団になると思うんですけど、アウトロー採用の参加者っていうのはそういう集まりだったように今は思います。良くも悪くも自分にとっての普通をねじ曲げたくない人たち。あるいはねじ曲げられない人たち。参加企業の方々には、まずは僕らに会いに来てくれたことに感謝しています。複数の採用を出した企業もあれば、結局誰とも縁がなかった企業もあったみたいですけど、あくまで僕個人の印象だと、プログラム内での顔合わせや説明会だけではなく、ネットや対面でのやりとりも含めて、ひとり一人の参加者、あるいは気になった参加者との間で心ゆくまで時間をかけてやりとりしていた企業が、結果的に満足度の高い採用をしていた気がします。企業の立場で想像してみると、良さを見つけるまでには手間と時間が必要だけど、その分ひとり一人の参加者と向き合う時間が無駄になりにくい採用だったのかなぁと勝手に思っています。

参加企業について

僕の書いている小説に興味を持ってくれて、読んでくださった社長さんや人事に方がちらほらいたのですが、その感想として「君は就職しない方が良いよ」という言葉を何人かの方から異口同音にいただいたことが、あの半年余りに起こったことの中で一番大きな出来事だったと思います。絵具、小説のネタを探すために就職するとはいっても執筆のために裂ける時間は当然減ってしまうし、それならば書くことだけに集中出来る環境で芽が出るのを待つべきではないかと。作品を読んでいただいたうえでの言葉ということで、自分がこれまでやってきたことを認められたことを嬉しく思った一方、就職しないで結婚は出来ないので、じゃあ自分は就職して家族を持つことを諦めるべきか。就職して家族を持つことか、作家を目指し続けることか、どちらか片方を諦めなければいけないのかと、しばらく悩みました。だけど数日悩んだあとに気づいたんです。もう自分のやりたいことっていうのは、ただ作家になることでもなく、ただ家族を持つことだけでもなく、家族を持って作家にもなるっていう、その一括りではじめてやりたいことなんだって。仕事をしながら作家を目指すのは難しいと何人かの方々に言っていただきましたが、難しいからといって自分の人生に妥協する人間が妥協のない作品を作ることなんか不可能だと思います。徹底的に欲深くなろうと腹を決めました。

今の会社を選んだ決め手

運命でしょうか。こっ恥ずかしいですけど。偶然という意味ではなく目の前の選択肢に対して、妥協しない選択を続けていった結果、たどり着いた場所という意味で運命的でした。先ほどお話した出来事があって腹を決めてからは参加企業の中でも、「この人たちと一緒に働きたい」と思えた幾つかの企業とお話を続けさせていただき、その中で自分にいちばん期待してくれたところに入れていただこうと決めて臨んでいました。今の会社の社長は僕がやりたいこと、出来ること、出来ないこと、迷ったことなんかも、ひと通り聞いてくれた上で一緒に働こうと言ってくださったので、最終的には強い納得感を持って就職活動を終わりにすることができました。

今後の展望

お仕事のほうで言うなら、気持ちの面ではずいぶん会社に慣れてきたのですが、知識や技術の面では至らない部分が未だずいぶんあるので、そこを積み上げつつ今まで自分が積み上げてきたものと繋げて活かしていければと考えています。作家活動の方も続けていくつもりです。就職する以前は、小説家として売れなければ食いっぱぐれてしまうという思いで危機感を持って書いていたのですが、就職して給料をいただくようになった今も、書かなければいけないという気持ちは少しも弱まることなく、むしろ強まっているので、きっと小説を書くことは今後も自分にとって必要な行為だと改めて感じています。将来的には多くの人に読んでもらえる作家になりたいです。プライベートですが、就職して給料をいただけるようになったので、今一緒に住んでいる人と近いうちにきちんとしたカタチで家族になれればと考えてます。


位川悠一さん(いがわゆういち)

十代の頃から小説家を目指す。大学中退後数年間、執筆活動に没頭。アウトロー採用を経て2014年12月IT企業に入社。現在はメディアシステムグループに在籍し、プログラミング勉強中。趣味は野球観戦(ニューヨークヤンキースファン)好きな生き物はペンギン。

Vol.1 就活アウトロー採用参加者のその後|粟生馨奈子さん

第1回目は都内のIT企業ではたらく、粟生馨奈子さん。アウトロー採用には0期生として参加し、早い段階で内定を決めました。入社3年目を目前に、現在の様子を聞いてみました。